国際即戦力育成インターンシップ  @アジア

経済産業省委託「国際即戦力育成インターンシップ事業」に参加するメンバーが、アジアの生の情報をお届けします!

「この国は奴隷ですよ」(ベトナムはホーチミンより)

 

「社会問題」つまり人々の「悩み」について考えているうちに、「そもそも幸せって何だろう」という問いに行き着いた。


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1. 牧歌的という幸せ、それを壊す外資系?

  ホーチミンから社会問題を見ると、ゴミ問題、大気汚染、失業問題などが挙げられる。何十年か前の日本と同じに見える。しかし、ホーチミンの人たちは一見、とても幸せそうだ。少なくとも、深刻な悩みなど抱えていないように見える。

 

休み時間の楽しそうな従業員たち
 

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古びたおもちゃ屋にやってきて真剣にぬいぐるみを選ぶ親子

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  いくら物価が安いとはいえ、豊かな暮らしをしているわけでは全くない。フォー1杯で安くても150円、普通なら200円はかかる。一方、平均個人所得は大体400万VND/月(2万円程度)である。優秀な大学を出て600~800万VND(3-4万円)/月もらえれば勝ち組、月収10万円もらえば、超エリートと呼ばれる世界だ。日本人感覚では、物価以上に給料が低い、と言わざるを得ない。

  それでも、ホーチミンでは身の危険を感じることはほとんどない。基本的にみな優しいし、道に迷ったら隣を走っているバイクに話し掛けることも日常茶飯事だ。気候や国民性という言葉で片付けてしまいたくなるが、少なくとも東京に十数年在住していた身としては、東京よりホーチミンの人の方が幸せそうだ。実際、2012年の幸福度指数によれば、ベトナムは2位という結果だ。(http://www.happyplanetindex.org/assets/happy-planet-index-report.pdf)


平日の日中から歓談や軍人将棋を楽しむ人々

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  こうして「牧歌的な暮らしをしているホーチミンの人々の方が幸せだ。でも外資系企業の進出は雇用を奪い、不必要な競争を強い、牧歌的な生活を壊しているのではないか。僕らは間違ったことをしているのではないか」と思うようになった。
  しかし、この考えがいかに浅薄であるか、思い知らされることになった。

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2. ホーチミンの幸せは幻

  とある会社訪問で、一人の社会人男性と仲良くなった。日本在住経験が10年近くあり、現在ホーチミンでビジネスコンサルティングを行っているという。彼とカフェで会った時の話が示唆に富んでいたので紹介したい。

①悩みと幸せ
  僕は漠然と、悩みがない状態を幸せと思っていた。しかし、彼の意見は違った。

ホーチミンに来る日本の人はみな、ここの人たちが幸せそうと言いますね。でもこの国は奴隷ですよ。発達段階で言うなら子供なんです。悩みにぶつかっていないだけなんです。だから幸せそうに見える。でも悩みにぶつからないと、人も国も成長できない」

  発達段階に関する理論自体、一つの仮説に過ぎないが、少なくとも腑に落ちる話ではある。例えば、日本は大気汚染という悩みにぶち当たり真剣に向き合ったからこそ、現在の東京は(首都にしては)きれいな空気を手に入れた。ホーチミンに来て、きれいな空気がいかに幸せか身に染みてわかった。悩みにぶつかったからこそ、成長した例だ。
  もし悩みがなければ成長もない。それは幸せと呼べるのだろうか。


②嫉妬と幸せ

「相手のことをちゃんと見ていないから、幻に惑わされて嫉妬したり見下したりしてしまうんです。ベトナム人は親日と言われますが、ベトナム人が日本人に対して持つイメージは、日本人が欧米人に対して持つ感情と近いものがあります」
「日本はいま思春期を迎えていますね。だから、色んな問題が起きています。でもそれを乗り越えたら、例えば北欧みたいに成熟した時期が来るのではないでしょうか。そして、そのためには、相手のことをちゃんと見る必要があります」

  様々な価値観を知れば、その分、様々な幸せを見つけられるようになる。知らない方が幸せなこともあるが、知らないからこそ見逃してしまう幸せもある。ベトナムで荒れ狂う交通事情や大気汚染に向き合っていると、地下鉄があること自体、ありがたいことだと強く思う。

山手線に文句を言う若者に思う(長谷川豊) 

 


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3. 変わりつつある幸せ

  日系をはじめとする外資の進出は、ホーチミンの幸せを変えていくだろう。ただ、進出は止められないし、現在のままでは様々な問題が噴出するのは目に見えている。早晩、ホーチミン楽天的な人々も悩みに直面するのだろう。彼らの幸せは変わりつつある。それを嘆くことは本質ではない。
(実際、10年ほど前はテレビがある家に人が集まるほどだったが、今は月200ドルの宿でもテレビがある)

  では何が出来るのか。


  直面しつつある悩みに対処しようとする動きも、もちろんある。
  私の勤務先は若手のベトナム人起業家をサポートする公益法人(Business Startup Support Centre)なので、様々な若手起業家に会う。中には、利益率の良い分野ではなく、あえて社会問題を解決するためのビジネスを考える起業家も少なくない。

 

来年1月に、ベトナムでも数少ないクラウドファンディングプラットフォームをローンチする友人
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 他にも、出産前後の女性の悩みを解決するため様々な国に渡り美容ビジネスを学ぶMr. Tai、他人に笑われながらもリサイクル意識を植え付けるための新規ビジネスを考え続けるMr. Huntun。学校教育に業を煮やし、就職支援の会社を立ち上げた20代の若者10名。

  そういった動きを加速させるビジネスモデルを考えることが、今回のインターンの一つの使命だと思うようになった。

(文責:窪西)